エネ管その12_レビュー①マンガでわかる熱力学

 こんにちは

 今回は、エネルギー管理士に関わるマンガでわかるシリーズの第1冊目のレビューを行います。

①「マンガでわかる 熱力学」, 原田知広(著), 川本梨恵(作画), ユニバーサル・バブリシング(制作), Ohmsha, 2200円(税別)
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通読目安 :90分(漫画部:40分、活字部:50分)
全199ページ内訳:漫画部約121ページ、活字部約78ページ
難易度   :★★☆☆☆(漫画部:★☆☆☆☆、活字部:★★★☆☆)
分かり易さ :★★★★☆
エネ管対応度:★★★☆☆
ストーリー :★★☆☆☆
作画    :★★★☆☆

 珍味研究会の存続をかけた、落ちこぼれ女学生と物理学教授の熱血熱力学体験教室。
 漫画部は漫画の利点を良く活かした動きのある説明が多く、活字部はミニキャラの対話形式と説明文が半々位のハイブリット構成。ミニキャラの対話は物語に組み込まれているので読み飛ばせません。基本的に偏微分や積分を用いた複雑な計算は活字部で行われます。出てくるサイクルはカルノーサイクルのみです。もちろんエントロピーやエンタルピーの説明も出てきますが、前者はしっかりと漫画部でもページ数を割いて説明していますが、後者は活字部で2,3ページ程度の説明しかありません。難易度的には大学1年生向けの熱力学の基礎の内容です。

【ストーリー】
 ピチピチの女子大生、理学部物理学科1年「村山瑛美」はサークル「珍味を追い求め科学的に考察する会」、略して「珍研」のメンバーである。ある日、大学学生課からサークルの活動実態調査として活動報告書及びメンバーの単位取得状況の提出を求められる。熱力学の単位取得が危ない村山は、部長「西田麻友」のすすめにより珍研顧問の物理学教授「益永淳一」の個別指導を受けることとなる。アシスタントとして加わった同じ物理学科1年生の「加藤直樹」とともに熱力学を様々な角度から学んでいく。単位取得に光が見えてきた中、もう一つの問題、活動報告書提出に部員達は悩まされていた。そこで提案したのが、オリジナルの珍味の製作。苦労の末作り上げ、サークル存続を認めてもらうため、大学側へ提出し試食してもらうはずだったサンプル「黄金のシュークリーム」を、何も知らない村山が食べてしまうところから悲劇は始まる。はたして珍研の行方は!?

・・・といった具合で、典型的な落ちこぼれ女学生と大学教授の組み合わせの物語です。ストーリーに目新しさはありませんが、基本的に力技と熱血で熱力学をぶち込んできます。恋愛要素はラストから2コマ目のわずか1コマだけ。モブ部員はたくさん出てきますが、主要登場人物は、落ちこぼれ女学生、アシスタント男子、教授の3人だけです。部長も数コマしか出てこないので、名前がついているうえに表紙を飾っていますがモブ扱いでいいと思います。

【作画】
 同シリーズでは平均的な作画です。ただし、吹き出しだけの説明は多くなく、動きの伴う解説が多いのは漫画としての利点を活かしているので良いことだと思います。
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(左から加藤直樹、益永淳一教授、村山瑛美)

【目次】
 プロローグ 珍研に迫る危機!
 第1章 温度と状態方程式(益永研究室 温度とは ほか)
 第2章 熱力学第1法則(部長の奇策 仕事とエネルギー ほか)
 第3章 熱力学第2法則(元に戻る法則を求めて 可逆?不可逆? ほか)
 第4章 エントロピー(サークルの危機と瑛美の決意 エントロピーってなんだろう? ほか)
 おまけに(ブラックホールと熱力学 エピローグ 珍研よ永遠に)

【内容】
 温度とは、熱と温度の違い、ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル・シャルルの法則、仕事とエネルギー、断熱壁、熱力学法則(第0、第1、第2)、準静的過程、比熱、理想気体、実在気体、可逆不可逆、クラウジウスの定理、カルノーサイクル、永久機関、エントロピー、エンタルピー、サイクル効率、クラウジウスの不等式、自由エネルギー、マクスウェルの関係式、ブラックホールが学べます。
 難易度的に、大学の物理学・物理化学の教科書(ファインマン物理学やアトキンス物理化学等)よりは遥かに簡単で、大学1年生の初学者向けの内容です。ただし、高校物理を修めていないと理解が出来難い部分が多いと思います。熱力学で多く出てくる微分積分の計算はほぼすべて活字部で行われますので、漫画部を読む分には高校物理を修めていなくても何とかなるでしょう。

 クラウジウスの不等式とクラウジウスの原理に関しては、かなり分かり難く記述されています。エントロピーに関しては非常に基本的なところしか触れられていません。エンタルピーはおまけ程度。ただし、熱力学の全体像をつかむにはちょうど良いくらいの分量だと思います。これだけでエネルギー管理士試験に対応できるかというと、ここまで読んでいただければわかるとおり、ただの1問も解けない程度の浅さです。最後のブラックホールに関する説明は完全に蛇足だと思います。ベケンシュタイン・ホーキングエントロピーやらなんやらは本書を手に取った読者は誰一人として必要としていません。

 漫画部は教授が動きながら説明してくれます。
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 益永教授はとにかく熱血です。熱い男です。でも、酒が大好きで、おつまみ供給元の珍研の存続を心から願うダメな大人でもあります。
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 活字部の半分ほどは、ミニキャラによる対話形式となっています。
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 残りの半分は、普通の文章による説明です。
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 漫画部と活字部は難易度差がかなりあり、漫画部の3倍くらい難しい内容が活字部で繰り広げられます。
 
 これが、本作のキーアイテム「黄金のシュークリーム」です。これを村山が誤って食べてしまうことで、ただの勉強頑張れストーリーからズレて飛躍していきます。
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 最終的に、熱力学個別指導で学んだ全てをシュークリーム作りに利用していきますが、どうなったかは読んでからのお楽しみ。

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 シュークリーム作りに無理やり熱平衡や熱力学第2法則、体積膨張をぶち込んでいく姿勢には惚れ惚れします。

 本書のおすすめ度は★★★☆☆とします。文系の方や物理未履修者には難しく、大学教養学部(1、2年生)レベルの初学者には簡単すぎる中途半端な難易度でもあります。漫画としてはよく出来ている方だと思いますので、決して安くはないですが、興味のある方は入手してみてはいかがでしょうか。もちろん、これ一冊ではエネルギー管理士試験に到底太刀打ちできませんので、イメージ作りの最初の一冊か、勉強スタートの動機づけのために利用してください。

 次回は、「マンガでわかる 流体力学」です。

 ではでは

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